
最近、お店の鏡越しにお客様とお話ししていて、ふと笑顔になってしまう瞬間があります。
「濱田さん、私のこのくせ毛、どうにかして真っ直ぐになりませんかねぇ」と鏡を見ながらため息をつかれる方のすぐ後で、別のお客様が「私、髪がペタッとしちゃうから、ふわっとしたパーマをかけたいんです」とお話しされる。くせ毛の方はストレートに憧れ、直毛の方はウェーブに憧れる。人間って、自分が持っていないものにどうしても惹かれてしまうんですよね。
本当に「ないものねだり」って不思議です。でも、その気持ち、すごくよく分かります。毎日鏡を見るたびに「ここがもう少しこうだったら」と思うのは、ごく自然なことですからね。
ただ、髪の毛って、お料理の素材と似ているところがあるんです。例えば、ホクホクしたじゃがいもを、無理にシャキシャキの大根みたいにしようとすると、ちょっと無理が出てきて、せっかくの素材の良さが消えてしまいますよね。
髪も同じで、それぞれに持って生まれた性質があります。くせ毛さんは、髪の毛の中の水分を吸いやすい部分とそうでない部分が混ざっているから、フワッと柔らかく動くんです。逆に直毛さんは、中の状態が均一に整っているからこそ、光をきれいに反射してくれます。
「ないもの」を無理やり作り出そうとして強いお薬を何度も重ねたりすると、かえって髪が疲れてしまい、本来のツヤや手触りが損なわれてしまうことがあります。理想のスタイルを追い求めた結果、髪が傷んで毎朝の扱いが難しくなってしまっては、なんだか悲しいですよね。
世の中には色々なメニューや新しい技術があって、SNSを開けば「これさえやれば理想のツヤ髪に!」と謳うものもたくさんあります。まるで誰もが同じ髪質を目指さなければいけないような気持ちになることもあるかもしれません。
でも、「今のあなたの髪が持っている、そのままの良さ」を一番大切にしたいと思っています。
くせ毛には、風に揺れたときの柔らかい動きや、サッとまとめた時に自然と出るふんわり感という、直毛の方から見ればたまらなく魅力的な個性があります。直毛には、風が吹いてもスッと元通りになる指通りの心地よさや、凛とした美しさがあります。
無理に正反対の性質に変えようとするのではなく、「自分の髪のいいところ」を少しだけ引き立ててあげる。それが、髪にとっても心にとっても、一番自然で心地よいスタイルなんじゃないかなと思うんです。美容室の帰り道だけでなく、何気ない日常の中で「あ、今日の髪いいかも」と思えることが、本当に大切なことだと感じています。
明日、お家で鏡を見る時、少しだけ視点を変えてみませんか。
「ここが嫌だな」というところを探す代わりに、「今日の髪、この毛先の動きはちょっと可愛いかも」「優しくブラッシングしたら、ツヤが出て綺麗だな」と、自分の髪の好きなところを一つ見つけてみてください。
もしパサつきが気になるなら、ほんの少しだけ保湿のオイルやクリームに頼ってみるのもおすすめです。つける時は、いきなり根元からではなく、まずは毛先に優しくもみ込んで、手に残った分を表面にフワッとなでるようにつけるだけ。それだけで、持って生まれた髪の表情がグッと生き生きしてきますし、夕方まで心地よい手触りが続きますよ。
無理をせず、自分の髪と仲良くお付き合いしていく。そんな風に、毎日を心地よく過ごせるお手伝いができたら嬉しいです。皆さんが求める「上質なナチュラルさ」は以外に、自分がいつも気に入っている髪型こそ、あなたの求めている髪型なのかもしれませんよ。明日も、皆さんの髪と心がフワッと軽やかでありますように。